[かいとうへん]


どうすればいいんだろう、が口癖になっているような気がする今日この頃、困りながらトレミーの廊下を移動用レバーとともに移 動しまくる。別に行きたい場所があるわけではない。トレミーの中をただぐるぐるぐるぐる回っているだけである。正直とても邪魔だろうなと自分でも思う。で もどうすればいいんだろう……と自分の足元あたりを見てうだうだと悩む。

?」
「やあ、どこに行くんだい?」

顔を上げると、向こう側からロックオンとアレルヤと……てぃ、ティエリアがいた。「ああ」となおざりに返事をして、なんとなくレバーをはなす。3人ともも レバーから手を放して、「あれ、、なんか疲れてない?」とアレルヤがすばらしく鋭い一言をおっしゃった。そ、そんなことはないさーと適当にお茶を濁しつ つ、刹那はいないのねと話題を無理やり変える。エクシアの整備してたみたいだけど、とちゃんと答えてくれるアレルヤの隣を極力意識しないようにするあた し。ロックオンの苦笑が視界の端に見えるということは、すごくあからさまに妙な態度なんだろうな……。
へえ、そこまでつきっきりで整備やってると真面目通り過ぎてる感じね、と言ってる最中に、ロックオンが口だけで何かを伝えようと……えっ、それはないよ、ここでやれっていうのは酷というもの だろ! だって人いるし廊下だし……再度戸惑うあたし。訝しげな顔をするアレルヤ。普段どおりの仏頂面なティエリア。がんばってみろよ、と笑うロックオ ン。決意を固めるのには十分だった。あたしだってクルーの乗員のひとりなんだ! プトレマイオスなめるな!(混乱中)

「あ、あのさそうだティエリア!」
「……なんだ」

わあ、すごい警戒してるよ! 警戒すべきはあたしじゃないのかなあと考える余裕などないはずだけど考えてる自分がいるのがちょっと笑える。あのそのえーとでつなぎそうになる文章をどうにか止める。変に間を空けると警戒心が増すだけだ、意表をつくことを考えろ!

「先に言うけどごめんなさいです!」
「……、お前」

続きの言葉は知らない。無理やり、すごい無理やりに彼のシャツの胸元あたりを引っ張って、その、俗に言う、キスとかいうやつをしたからです……って言って もあれだ、ただ唇を当てただけっていうか、夜の映画館的なものじゃないっていうか……何言ってるんだあたし?! 目つぶってるからティエリアがどんな顔し てるのか知らないし、二人がどんな顔してみてるのか知らなかった。恐ろしくて見たくも無い。
はなして瞳を開けたら、とても目を見開いたティエリアがそこにいてあたしを見ていた。普段絶対に見ることの出来ない表情。「そ、それだけですっじゃあ ね!」とやり逃げすべくレバーを握って去っていったあたしを、すぐに追いかける人はいなかった。ちなみに二人の顔はがんばってみないようにしました。それ でも見えたロックオンがニヤニヤ笑っていたから、いつか彼を何かの罠にでもはめようかと思います。



「ティエリア、お前でもそういう顔をするんだな」
「……どういうことだ」

返された声音が驚愕を無理やり押し隠そうとしていることすら丸見えなもので、ロックオンが少しばかり笑うと鋭く睨まれた。だが少しも恐ろしく感じられない のは単にティエリアが珍しく面食らった顔を見れたからか、それともロックオンが持ってる札の方が強いという自信を得ているからか。見上げているにも拘らず 圧力を感じる視線に少し感服しながら、壁に寄りかかり札をオープンする。

「読み不足だったんだよ」
「……」
「少しでもあたりを見れば失敗することに気づいたろうが、それを怠ったお前の負けだ」
「何を言っているのか、わからないな」

嘘付け、というロックオンを無視して、ティエリアは一人で先に行ってしまった。とは逆の方向に。「後でなんか言っておけよ」と声を投げるが、彼がそれをちゃんとキャッチしたかどうかまではわからない。ったく、と軽く息を吐くと、アレルヤがくすりと笑った。

「お疲れ」
「どうしてこう、変に意地っ張りばっかりいやがるんだここは」
「あなたもその一人でしょう」
「否定はしないが肯定もしねえ」

それはそれは、と意味深に呟くアレルヤに彼は「ていうかお前も『その一人』だろ」といいながらレバーを手にする。

彼の敗因、それはただの観察不足だ。の手前「え、うそ」などと返したががティエリアを好いていることなど見れば比較的すぐにわかるもの。少な くとも好意を抱き嫌悪を抱いていないことはわかるだろう。これはさすがの刹那も知っているようだし。だが気づかず、おそらく「が嫌っている」前提で告げてし まったのはティエリアの過失だ。それだけの話。気づいていたら彼は黙していただろう。しかしロックオンから見れば繋がりを切ることを失敗してくれてよかったと思う。悪気無く思う。

まったく、ともう一度呟いた。どうしてこう、一癖も二癖もある奴しかいねえんだここには。
彼自身のことをすっかり除外して、彼は心から思った。






彼の言葉は死んでしまった

タイトルは207β様「抜き取り式お題 参」からお借りしました。多謝です。
(諦めるために告げた言葉で君を得てしまっていいのだろうか)
(20071103)